初期研修医のみなさん、はじめまして。MERDOメンター医師の佐々木と申します。
ここではMERDO立ち上げに込めた思い、つまり、私たちの理念についてご案内させてください。
MERDOは初期研修医に向けたメンタリングサービスです。メンタリングを通して初期研修医の先生方をサポートし, 実り多い研修を送ってほしいと願い、3人の医師がこのサービスを準備しました。
みなさんは、日々の研修で困っていることはありませんか。
私が研修医をしていたときは本当に色々なことに悩んでいましたし、困っていました。それは以下のようなものでした。
いかがでしょうか。
みなさんにも当てはまるものがあったのではないでしょうか。
このように初期研修においてはこのような具体的な困りごとに直面します。
当事者であるみなさんは、日々直面する困りごとの一つ一つが大きな問題で、日々疲れ、時に閉塞感や絶望感を感じることもあるのではないでしょうか。
「このままで、ちゃんとした医者になれるのだろうか」と。
しかし、上級医や指導医は必ずしもみなさんの気持ちや置かれた状況を十分理解してはくれないことも多いです。
特に、年の離れた指導医や上級医の医師は言います、「だいじょうぶ、普通に研修していれば絶対に一人前の医者になれるから」と。
初期研修医のちっぽけな悩みだと思われている気がして、指導医とのギャップを感じ、孤独を感じる方もいると思います。私もそう思っていました。
このギャップはどうして生じるのでしょうか、6年目の今ならわかります。 (←執筆時, 2024年11月)
それは、
「みんな、自分が初期研修医だった頃のつらさからもはや離れてしまっているから」
です。
これを書く私 (佐々木)は卒後6年目ですが、卒後3年目までは初期研修医の先生たちと、悩みや困りごとをよく共有できていたと思います。
しかし、4,5年目になった時に、彼らの悩みや気持ちがどんどんわからなくなりました。もはや、自分が研修医だった時の悩みが思い出せなくなったのです。
知識とスキルを身につけ、できることが増えると、少しずつ自信がついてきます。そして、自信がつくと、「できない人の気持ち」がわからなくなっていきます。
最終的には「みんな、頑張ってれば大丈夫だよ」としか思わなくなるのです。
自分が初期研修医の時に感じた指導医とのギャップがよくわかりました。
少し脱線しますと、これこそが初期研修医に対するサポートサービスが少ない理由だと考えています。
みんな、確かに初期研修医の時に困っていた。しかし、3,4年目になると、その時のことを忘れてしまい、「しんどかったけど、良い経験だった」として美化されるのです。
しかし、初期研修のバーンアウトは現実に少なくありませんし、私たちは、この「美化」について改善の余地があると考えています。これもMERDOを立ち上げた思いの一つです。
初期研修医教育においては、指導医の高い視座からの教育も大切ですが、同じ目線での、同じレベルでのサポートや学びが足りていないと考えています。
さて、幸いにも私は初期研修医の気持ちを2回味わうことができました。
私は脳神経内科医として、血管内治療も行っています。専門研修の中で赴任した市中病院では脳外科の先生方から脳血管内治療を学びました。
脳神経内科とは全く違う思考、手技に対する準備・・・。まったく新たな世界に足を踏み入れた感じがしました。
当初、全く使い物にならず、何もできることがなく、自分が初期研修医になった時の「あの気持ち」を再び味わうことができました。
年の離れた脳外科の指導医の先生は、私にたくさん教えてくれました。
しかし、私は、それよりももっともっと基本的なこと、例えば、動脈穿刺のコツ、デバイスの持ち方&扱い方、コネクターの締め具合 など、本当に些細なことでつまずいていました。
指導医の先生から見た「本質的で重要なこと」と「私がつまずいている些細なこと」の間には差がありました。
このように、私は指導医の先生が想像すらしない些細なことでつまずいていましたが、指導医の先生は知らなかったと思います。
なぜなら、取るに足らないことだから。
しかし、取るに足らない些細なことも手技を構成する一つ一つの所作なので、それらがうまくいかないと、手技は成功しません。穿刺ができなくては検査も治療も始まらないし、高額なカテーテルデバイスは扱い方を間違えると使えなかったり壊れたりします。
さて、トレーニング開始から半年後には、私が困っていた些細なことは、実際に取るに足らないことだったとわかりました。しかし、それらは手技を成功させるために必要でしたので、誰かがはじめ教えてくれたらよかったと思いました。
自分が来年後輩を教えるときは、この経験を活かそうと思います。しかし、5年後や10年後には、穿刺のコツやデバイスの持ち方を教えることはできないのではないかと危惧します。
なぜなら、今は「自分が些細なことでつまづいた」ことをを覚えていても、時間が経てば、記憶が薄れていくから。
これは初期研修医教育の問題と全く同じ構造だと思います。
さて、このように、初学者と上級医の間には埋められない差があります。よって、上級医が初学者の気持ちに寄り添うことは難しいでしょう。これは現実です。
では、ここから結論まで一気に進みます。 初期研修医の学びを促進する上で重要なのは、どのような存在か。
それは、メンターです。
私の血管内治療の場合は、脳外科の一番の若手の先生 (当時8年目) がメンターでした。
私が困っていた些細な所作に関する質問や疑問を全て彼にぶつけることができました。彼は、自分が血管内治療を始めた時の経験や、その時の対処方法を私に伝えてくれ、それらは私の学びの軸になりました。
そして、私の成長を横で見て、次に目指すべき目標を提示してくれました。
「次にこういう手術があるから一緒にやろう。助手の動きを完璧にしておいて」とか、「次の症例は先生に術者をやってもらうから、準備しておいて」と、私のレベルに応じた課題を与えてくれました。
彼の存在がどれだけ助けになったかはわかりません。
おそらく、彼がいなくても3年や5年間のトレーニングを積めば、私も同じところまでいけたのだと思います。
しかし、素晴らしいメンターがいてくれたことで、私の日々の負荷はとても軽くなったし、成長も速くなったと思います。
これが大切だと思います。なぜなら、日々の負荷が重すぎると、何かを諦めることもあるだろうし、最悪の場合心身を壊すこともあるからです。
さて、このように、良きメンターと出会うことでより実り多い研修を送ることができると思います。学びを促進し、自分が望む成長を手に入れることができる、そんな研修を送ってほしいと願っています。
結論を書きます。
初期研修の質を左右する最も大きなファクターの中で、外部サービスによって変えることができるファクターは、
「メンターとの出会い」
です。
自分に合った優れたメンターと出会うことで、初期研修の質 (と心理的安全性)が飛躍的に向上します。私は、そう確信しています。
そういったメンターとすでに出会えている方は幸運です。その方と共に研鑽を積めば、充実した初期研修生活を送れるでしょう。
しかし、もし、そういったメンターと出会えておらず、日々悩み、困っているのであれば、メンターを見つけることをおすすめします。
MERDOは、初期研修医にメンタリングを提供するサービスです。
3人の若手医師が準備しました。10年目総合診療医、産婦人科医&総合診療医と6年目脳神経内科医です。(執筆時)
2-4週間に一度の定期メンタリングを通して、みなさんの初期研修をサポートします。また、さまざまなつながりも提供できるかもしれません。
MERDOのメンタリングにご関心を持っていただいた方は、下記よりお問い合わせ&お申し込みください。